ハイ、どうされましたか。
ほう、ひどい偏食。
確かに最近多いですね。食生活の多様化。食の欧米化で魚を食べずに。まあ、私も肉ばかり食べてこの腹ですよ。
肉じゃない。ベジタリアン? いやヴィーガン? 違う。ああ、恥かしがらないで、医者の守秘義務がありますからね。
色……? ほう、着色料……も含めた、〝色のついたもの〟ですか。たとえば赤ならトマト、も含めた……赤いハイヒール。赤いネッカチーフ。赤いスポーツカー。なるほど。
ああ、歯は見せなくても結構ですよ。綺麗な歯ですね。ハイ。異食症という訳でもないですねえ……人間は不可思議な形で凄まじいスピードで進化する存在も極稀に現れるものです。
しかしながら、色というものも珍しいものです。いえ、どうぞ。お話下さい。
赤も様々な赤があり、トマトの赤は夏の爽やかさと入道雲から吹く風の味。赤レンガは喪失の記憶とぬくもりの炎の味。国旗の赤は昇る太陽と圧倒的な熱量の味。
中々、グルメですな。
食べてみたい赤がある?
人間の血の赤。
まあ、落ち着きなさい。
刃物を仕舞って。
どうしてそんなに落ち着いていられるかって?
それは、ここは私の〝庭〟なんだから……。
フフッ……。
息のある内に言っておこう。
私も〝肉〟しか食べられなくなってねえ……。
(初稿:2026/05/13)
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